チームで乗り越えるSPA
「JINS Switch」プロジェクトメンバー

TALK01

度付きメガネが、ワンタッチでサングラスにもなる「JINS Switch(ジンズ・スイッチ)」。1本で2役という機能性・独自性で、JINSとして約3年ぶりとなるテレビCMでも話題となり、大ヒット商品となりました。しかもコスト削減による粗利率改善もあり、利益面でも経営に大きく貢献する結果となっています。この成功に至るプロセスを、プロジェクトを推進したMD・デザイナー・調達・店舗オペレーションの各責任者に聞き、JINSらしい社内連携とチーム力の強さを掘り下げます。
  • 内海 允斗

    プロダクト本部
    商品企画グループ
    オプティカルチーム
    チームリーダー

  • 柴田 文郷

    店舗営業本部
    店舗オペレーショングループ
    統括リーダー

  • 北垣内 康文

    プロダクト本部
    商品企画グループ
    デザインチーム
    チームリーダー

  • 渡邉 和巳

    プロダクト本部
    生産グループ
    フレーム調達チーム
    チームリーダー

メガネとサングラスの1本2役
戦略商品に振り切ったことで、売り上げの核に急浮上

まず、皆さんの役割について、それぞれ教えてください。


内海:私はMDとして、年間のJINS全体の成長率を算出し、その中で「JINS Switch」の貢献度の割り当てを設計しました。そして、その計画をデザイナーにつなげるべく、商品構成の設計から生産本数予測、発売タイミングの設定など、製造から販売までの大枠を決めました。

北垣内:私はデザイナーとして「JINS Switch」のデザインを担当しました。前年までのシリーズは比較的高い年齢層向けの商品でしたが、若い層に受け入れられるようにデザインを変更し、それにより売り上げに貢献できたと自負しています。

渡邉:私達はMDとデザイナーから要望を受けた企画アイデア・意図を中国の協力工場へ共有し、その商品を具現化させるために品質・コスト・納期がJINS基準に見合っているかどうかを日々調整~確認しながら、図面やサンプル依頼~発注~量産~出荷を担う部署になります。

柴田:私は店舗オペレーションを担当し、ものづくりのプロセスで商品に込められた想いやコンセプトを店舗スタッフに伝え、前向きに販売に取り組んでもらうことが役目です。また、売り場の構成やお客様へのアプローチの改善、現場の声をフィードバックすることを通じて、次の商品作りに活かしてもらうことも重視しています。

まさにSPA(製造から販売まですべてのプロセスを一貫して手掛ける事業)として、社内連携をしている皆さんですね。「JINS Switch」大ヒットまでのプロセスについて、まずは発端を教えてください。


内海: もともと前身として「Front Switch(フロント・スイッチ)」や「Switch Temple(スイッチ・テンプル)」といった商品がありました。どちらも、一つのメガネをシーンや気分に合わせてスイッチできるのが売りでしたが、この機能性をシンプルな顧客価値として突き詰めるため、まず「JINS Switch」というネーミングに変更し、商品企画も仕切り直しをすることにしたのです。

北垣内:「1本でメガネにもサングラスにもスイッチ」するというわかりやすいコンセプトに振り切りました。実は、このシーズンの核に据える商品として、他にも候補があったのですが、「今、このタイミングで皆が飛びつくニュースや価値になるもの」という観点から、「JINS Switch」に絞って勝負しよう、ということになりました。

発売まで実質2ヵ月で、生産本数を1.5倍に
できる工夫を積み重ねて、「やるしかなかった」

そのスタートは、スケジュール的にはどういうタイミングだったのでしょうか。


渡邉: 年末に企画が決まって、翌年のGWに合わせて売り始めるということでした。それを聞いて、ひっくり返るほど驚きました。サングラス商戦はゴールデンウィークが本丸なので、発売日を3月第3週に設定。その間、協力工場のある中国は旧正月に入りますから、準備期間は実質1ヵ月半か、せいぜい2ヵ月というところ。ですから、年末時点で進んでいた生産工程も一度見直して、協力工場に再度交渉をさせてもらいました。それでも厳しいので、分納を重ねるスケジュールを組んで、調達としては全員一丸となって何とかやり切った感じです。

北垣内:そのシーズンの主力商品として打ち出すわけですからバリエーションも欲しかった。そこで急遽カラー展開を増やすなど、生産工程の負担を抑えながら、とにかくできることをやっていきました。

店頭では、どのような反響でしたか。


柴田:メガネとサングラスの2本分で8000円 でしたから、非常にお得感があり、入荷する端から売れていきました。サングラスのプレートを付けても厚ぼったくならず、スマートなのも好評でしたね。来店されるのは口コミ中心で、使っている人を見て「いいな」と思われた方が多かったです。しかし在庫が追いつかず、肝心のGWには欠品状態になってしまい・・・。あれば売れるのにと、歯がゆい思いで一杯でした。その感覚を翌年につなげたいと思っていましたね。
また、使っているとプレートがやや落ちやすいといった声もありました。それでもあれだけ売れたのですから、より完成度を高め、物量も合わせていけば爆発的に売れると、現場感から確信できたのです。

前年に感じた可能性と改善すべき点をふまえ
商品力も数量も、万全の体制で新シーズンに突入

そうした手応えや反省をふまえて挑んだ翌年は、どういう戦略でしたか。


内海: 欠品させずに前年のような売り逃しをカバーできれば、売上の倍増はできると見込みました。ただそれ以上に売れる可能性を感じていたので、翌年は生産数を思い切って前年の3倍に設定。それを売り切るための方策として、JINSでは3年ぶりとなるテレビCMで、使用シーンが明確にイメージできるよう訴求しました。
また価格も、基本セットを1万円、偏光レンズセットを1万2000円とし、プレートが落ちないようマグネットを強化して、より良いユーザー体験の提供に努めました。

北垣内:デザイン面では、店頭のお客様からの「女性向けがあれば欲しい」との声に応え、女性に人気が出てきているメタルのラウンドタイプを作りました。1本2役は、もともと比較的年齢が高めの男性が使う印象でしたが、前年の経験をふまえ、デザイン性で若い世代にもアピールできるという手応えがあったのです。結果的に、20代女性の購入者が純増し、大ヒットとなりました。

店舗での反応はいかがでしたか?


柴田:前年に苦労した点がほぼ改善され、テレビCMによるプロモーション効果もあって、「会社としてがんばる」スタンスが販売現場にも伝わったのが良かったですね。また、早いうちに店舗スタッフに、デザイナーから直接コンセプトや思いを伝える場をもってもらったり、前年から改良されてプレートが外れにくくなっていることを寸劇で見せてもらったりしました。この本社からのエールは効きました。
発売が始まってからは、「これだけ商品が良いのだから、売れなければ現場の責任だ」と思って、いつもにも増して売り場の作り方やお客様へのアプローチなどを工夫してかかりました。細かな改善をスピーディーに行い、JINS一丸となって「JINS Switch」を売り切るのだという気概が現場にも満ちていましたね。

定めたゴールが困難なほどチーム力が高まり、個人も成長
たすきをつないでチャレンジするから、成果が出せる

このプロジェクトを通じて改めて感じられたJINSのカルチャーについて、それぞれの立場からお聞かせください。


内海: 挑戦志向が強いということ。前年の3倍もの在庫を持つチャレンジにも関わらず、前向きに、全力で売りぬくために社内の全員が動いてくれますし、そうするのが当然だろうというカルチャーがあるのだと改めて実感しました。
MDとしては「がんばるエネルギーは集中させるべき」と学びました。大きなプロジェクトで関わる人数も多い中、ワンメッセージに絞ったことで動きやすかったです。

北垣内: 特に田中社長から常々感じることではありますが、「意志の強さ」とその「目利き力」でしょうか。旗を立てる力というか。この力はJINSとして非常に重要で、私やほかのリーダークラスにも求められることでしょう。失敗を恐れず、リスクがある中での決断する経験を繰り返して必ず伸ばしていきたいと思っています。

渡邉: JINSらしさは、「柔軟性」にあると思います。突然設定される目標やゴールに対しても負けずにコミットし、120%の出来を目指していれば、今後もずっと成長していけると思います。調達の立場としては、驚くようなゴールを設定されたとしても、その瞬間から、どう交渉すれば生産工程をうまく進められるかを考え始めています。また、メンバーや協力会社に伝える義務がありますから、なぜそういうゴールが設定されたのか、背景まできちんと知っておくことが大切です。受身にならず、前のめりに自走できるのは、それが叶う環境だからだと感じています。

柴田: JINSでは、スピード感をもってやらねばできないような案件が多いです。順序だててできる仕事の方が少ないかもしれません(笑)。ですから、手探りの中で最善を尽くせるような人に向いていますね。
また、JINSは製造から流通、小売までをカバーするSPA業態ですが、小売の部分における「店舗の重要性」を社員全員が分かっているべきだと思っています。店舗スタッフに販売目標や注力する商品について伝える際には、「会社にとってどうなのか」だけでなく、「お客様にとって」「店舗スタッフにとって」どうなのかまでを考えて伝えていこうと心がけています。この商品が世に出ることで何が変わり、生活がどう便利になるのか、といったことですね。そうしたことまでをやり抜いてこそ、「JINS Switch」のような大ヒットの成功をおさめられるのではないでしょうか。

 

ありがとうございました。