日本初へのチャレンジ
「コンタクト自販機」プロジェクトメンバー

TALK02

渋谷のカルチャーの中心であった「渋谷PARCO」のリニューアルグランドオープンに合わせて、JINSは最新テクノロジーを結集した次世代型店舗「JINS渋谷パルコ店」をオープンしました。自身の度付きメガネを着用したまま、バーチャルで店頭のメガネが試着、視認ができる世界初のサービス「MEGANE on MEGANE(メガネ・オン・メガネ)」に加えて話題を集めたのが、日本初、スマートフォンのQRコード決済で購入できる1日使い捨てコンタクトレンズの自動販売機「TOUCH & COLLECT(タッチ・アンド・コレクト)」です。
この企画から開発、導入、そして店頭での運用に携わる4人のJINS社員に、このプロジェクトのプロセスを伺い、「JINSらしさ」に迫ります。
  • 原 心平

    CX戦略本部
    システム会社でインフラ構築や社内システム保守、スマホアプリや金融機関向けシステムの開発を経験したのち、事業会社でECシステムの開発及び運用を担当。2019年、ジンズに入社。

  • 濱田 卓男

    CX戦略本部 CXマネジメントグループ セールスプランナー
    2009年、ジンズに入社。エリアリーダー、マーケティング室を経て現職。

  • 河野 葉子

    新規事業企画室 CLメディカル品質管理
    医療機器・医薬品の薬事や品質及び安全面での運用サポートを担当、眼科専門の医療機器の取り扱いは10年以上、コンタクトレンズ販売店の勤務経験も。2017年、ジンズに入社。

  • 福原 将明

    店舗営業本部 店舗OPG 店舗OP エリアリーダー
    2012年、ジンズに入社。店長・統括店長を経て、現職。

コンタクトレンズブランドとしては最後発。 JINSならではの新しい購入体験の創造を追求すると、答えはひとつだった。

今回のコンタクト自販機導入プロジェクトにおいて果たした役割について、それぞれ教えてください。


原:私は自動販売機本体のシステム開発および基幹システム向けの売上等データ取得の仕組みの構築を担当しながら、プロジェクト全体の進行、スケジュール管理を担いました。

濱田:私は、決済の仕組みの構築および関連する折衝等を手がけました。決済手段として国内外10数社のQRコード決済が可能ですが、特にLINE Payではシステムの連携が最適化でき、優れたUIが実現したと評価を得ています。

福原:私は渋谷地区のエリアリーダーとして、渋谷パルコ店の補佐を務めています。お客様が自動販売機でコンタクトレンズを購入される際に、何か問題が生じた場合など、本部との橋渡し役となります。通常、店舗の新規オープンであれば、本部と連携して動くのは開店日直前なのですが、渋谷パルコ店については新しい取り組みが盛り込まれたため、開店1か月間前くらいから皆さんと協働でき、刺激になりました。

河野:私は薬事担当者として、医療機器であるコンタクトレンズを新しい形態で販売するための安全面の監督、そして運用の仕組みについて、関係機関への許可申請手続き等を行いました。今回は特に、渋谷パルコ店のオープンに間に合わせるという超速のスケジュールが前提だったため、通常以上の努力と根回し、そしてやり抜く覚悟を要したプロジェクトとなりました。

どのような経緯で、「コンタクトレンズの自販機」という革新的なプロジェクトがスタートしたのですか。


濱田:JINSが1日使い捨てコンタクトレンズ「JINS 1DAY」の販売を始めたのは2017年ですが、その頃から自動販売機で販売したいという話は社内で出ていました。コンタクトレンズマーケットは、既存のプレーヤー数社で上位を寡占している状態。そんな中で最後発である我々が考えたことは、購入体験までを含めて新しい価値をお客様に提供することで、認知を広げていきたいという思いがあったからです。お客様に合わせて度数を調整するメガネは自動販売機では提供できませんが、度数決め打ちの商品なら可能なはず。「JINS1DAY」をより身近に手軽にご利用いただくため、可能性を模索する動きが始まったわけです。

原:私が入社する前は、コンタクトレンズ用に自動販売機を提供してもらえるよう国内のベンダーに一通りあたったものの、対応できる会社が見つかっていない状況でした。そもそも自動販売機は、飲料など一定の重量のある商品を対象としているものがほとんどです。コンタクトレンズのような軽いものを扱う機構にそもそもなっていないため、専用機を設計・開発・試作まで対応してくれるベンダーが国内にはなかったのです。
それが、中国では実績があるらしいと聞きつけ、中国の自動販売機の取り扱いのあるベンダーと共同開発することとなりました。共同開発が動き出した直後に入社した私は、入社後すぐにこのプロジェクトに参画しました。

薬事上の要件を満たしつつ、JINSアプリに必要情報を登録
使い捨てコンタクトユーザーの購入にまつわる不便を解消

エンジニアの原さんから見て、この開発はどのあたりがチャレンジングでしたか。


原:ユーザーがタッチパネルで操作して、決済手段がQRコードという自動販売機がそもそも存在していませんでした。また、JINSでイメージしていたのは、スマートフォンで注文と決済をしていただき、商品を受け取るのが自動販売機という仕組みです。中国市場にある似たタイプのものを参考にして要件定義を行い、模索が続きました。その点では、デザインという意味でも難しかったですね。

もう一つのチャレンジが、自動販売機の販売データをJINSの基幹システムにどう連携させるかでした。自動販売機で用いるコードはPLU(Price Look Up)コードといって、販売価格のみを紐づけて商品管理に役立てるものです。一方、基幹システムでは、SKU(Stock Keeping Unit)コードが基本で、在庫や原価の管理をしやすいよう品番やカラーごとといった最小単位(ロット)で管理しています。この管理単位の違いは重大な問題で、基幹システムにとっては「異物」である自動販売機からのデータをどう取り込んでいくか。短期間で対応する必要があり、なかなか大変でした。

そうした「新しいもの」であったコンタクトレンズの自動販売機ですが、ユーザー体験としては何がどう新しく、また便利なのでしょうか。


福原:店頭における流れでいえば、スマートフォンのJINSアプリにご自分のコンタクトレンズの指示箋(せん)の内容を登録いただいていれば、5秒ほどで購入できます。まさに自動販売機ならではの手軽さですね。支払いはQRコード決済で各社に対応していますので、これもスマートフォンのみで完結します。

河野:コンタクトレンズの購入には、眼科医による指示が必要です。通常は、その指示箋を持って販売店に行き、カウンターで適正使用の説明を受けた上で購入します。コンタクトレンズの指示箋というのは、発行する医療機関によりますが3か月や半年など有効期限が長く、その内容で複数回に分けて購入する事が多いです。つまり、使い捨てコンタクトレンズのユーザーからすれば、スペックや使い方も分かりきっているのに、販売店を変えると購入するたびにイチから時間をかけて説明を受けるといった段取りを踏まねばならないわけです。これには薬事担当者としても、情報提供や受診確認の形骸化を感じていました。

そこを新しく、便利にすることが自動販売機で実現できたわけですね。


河野: そのとおりです。お客様の負担が少なく、安全管理上も問題のない販売方法の確立を目指し、最適なものにできたと思います。
実際のフローでいうと、まずお客様にJINSアプリもしくはLINE上でコンタクト指示箋情報の登録をしてもらいます。全国の眼科リストから受診した医療機関を選びます。そのほか有効期限を入れ、JINSからサービス提供する際の安全装用ルールへの同意にチェックすると、その情報を示すQRコードが取得できるので、それを自動販売機にかざして購入するという流れです。

ECとリアルをつなげるショーケースの意味を持つ店舗だから
スマホだけで完結できる、スマートなUXを実現

登録さえ済ませれば、まさに5秒で買えますね。実際に渋谷パルコ店で、お客様からの反応はいかがでしたか。


福原:動画や掲示で十分、購入方法は分かりやすいようで、特に質問をいただくこともなく、みなさんスムーズにご利用いただいています。また、スタッフが購入をお勧めするというよりは、あらかじめ評判を聞いて興味を持ち、体験してみようと足を運ばれているお客様がほとんどです。それは、当店のある5階が「NEXT TOKYO(ネクスト・トーキョー)」といって、渋谷PARCOのなかでも特に「ファッションにテクノロジーを掛け合わせてECとリアルをつなげる新売り場」と打ち出されているフロアだからでしょう。そのコンセプトに惹かれて来店されるので、自動販売機自体の写真を撮っていく方も多く、「新しいモノ」として発信できていると感じます。

「ECとリアルをつなげる」ということで、決済手段をQRコード決済に絞りこんだのですね。


濱田: JINSとして渋谷パルコ店には「新しいモノ」を盛り込む前提で企画を進めましたから、まず現金決済ではつまらないし、クレジットカード決済もそう目新しくない。今の時代ならやはり、QRコード決済だとなりました。

原:それに実は、QRコード決済は仕組みがシンプルなので、それで全体の開発期間を短縮できたメリットもあるのです。これがたとえば交通系ICカードだと、自動販売機に組み込む決済端末としては既存の製品が使えますが、組み入れた後に審査機関による自動販売機の検査が必要で、それだけで2ヵ月はかかります。それでは渋谷PARCOのグランドオープンに間に合わなかったでしょう。QRコード決済1本に絞ったおかげで、短期に実現することができました。

今回は決済手段にしても、もちろん機構の開発にしても、外部との連携や交渉が数多く必要なプロジェクトでした。それを半年足らずというスピード感で実現できた要因は何でしょうか。


濱田: 期限が決まったからできた、というのはあります。実はコンタクトレンズを自動販売機で売ってみようという話自体が出てきた2月頃には、特に期限は設けていなかったのです。それが6月頃に突然、渋谷パルコ店の目玉の一つにしようと決まって、慌てて走り出しました。「NEXT TOKYOだから、スゴイものを出さないと!」というわけですね(笑)。

原: 揃わないものは省き、必要十分な最低限の機能を見極めて、間に合わせることが最優先でした。それで振り切ることができました。
また、決済手段の各社との交渉でも、それぞれ審査には通常2~3ヵ月かかるのですが、個別に相当掛け合い、一定の条件を提示して特例として扱ってもらうなどして何とか間に合わせました。自分で引いたスケジュールに収まるよう、とにかく周りに協力を仰いで突き進んだような感じです。

「やりたいエネルギー」に応えて無我夢中で進むと不思議と糸口が見えてくる

薬事関連はいかがでしたか。アプリを活用したコンタクト自販機は前例がありません。相当なチャレンジだったのではないですか。


河野: 通常ならゆうに2年はかかる内容でしたね。特に役所関連の手続きにおいて、前例のないことはなかなか進みません。だからと言って、最初にできないと決めてしまえば、プロジェクトの全てを否定することになります。それよりは、まずできることを前提に、法務をはじめ、運用に関わる社内システムや経理、物流および在庫管理など関係者を集めて「やりましょう」ということ。そうやってスタートさせてしまい、あとはゴールを目指そうと言うスタイルですね(笑)。各人が適切にプレッシャーをかけ合うことで、業務を滞らせない状況を作ってしまうわけです。ジンズに入社して初めて、そういうやり方を覚えました。

困難と思えることでも、スピード感をもってやり抜く術。それが、JINSらしさですね。


河野:プロジェクトの先に、あらゆる要素で赤信号が見えたとしても、経営からは「やりたいというエネルギー」が押し寄せてきます。ならば、やるだけ。とはいえ、私の担当する薬事においては、逸脱はご法度です。安全管理や法規を守りながらもそのキワを行くようにして進めるのですが、不思議なことに、そうしていると糸口が見えてくるのです。必死に通り抜けたら、最終的にはキレイに形になっていたということが、JINSではよく起こりますね。

一同:あるある(笑)! 

濱田:たしかに決済においても、一番苦労したLINE Payがもっとも美しいUXに仕上がったと思います。

決済の苦労はどのあたりにありましたか。


濱田: 購入の際、JINSアプリでは、取得した指示箋情報を示す会員QRコードを自動販売機にかざします。その後、決済サービスのアプリを別に立ち上げる必要があります。ですがLINEなら、LINE画面からそのまま他に遷移せずに、決済もそのままLINE Payで行えるのです。1つのアプリで購入プロセスを完結できるわけですね。
細かい説明は省きますが、LINEの各種外部サービスとの連携事例としても、もっともスマートに、優れたUXを実現できたといわれる所以です。

福原:そうした工夫があるので、お客様が店頭で悩まれることもないのですね。

他社にはない、「いくらでも挑戦でき、協力が得られる」風土

では最後に、このプロジェクトを通じて改めて感じられたJINSのカルチャーについて、それぞれの立場からお聞かせください。


原:エンジニアとしてこれまでも、納期を考えて仕事をしてきましたが、JINSで初めて、自らスケジュールを引いて引っ張っていくようなスタイルを経験しました。その無茶から生まれたものが、予想以上に優れていることに驚いてもいます。入社して半年ほどでこのスゴイ経験ができたのは喜びですし、また、ダメとか無理とか言わない人が多く、助けられたと実感します。

河野:JINSには「ダメという前に、まずやってみよう」というタイプの人がたくさんいます。そういう環境に助けられることは本当に多いですね。私自身、前職では仕事で関わる人はごく限られて少数でした。JINS入社初日だけで、前職を通してお会いした方々を超える人数の人たちと話をしたのが衝撃的でした。そんな私が今ではすっかりJINS流で、むしろ周りの人を鼓舞するようになっています(笑)。そんな変化をもたらしてくれたJINSに感謝しています。

濱田:「チャレンジ精神」は、田中社長が一貫して言っていることですね。失敗を恐れなくてよいスタンスも同時にあり、誰もが挑戦できる環境があるので、こうしたプロジェクトもやり遂げられるのでしょう。
私は中途入社でJINSに入社して10年になりますが、これだけ意思を尊重して挑戦させてくれる会社は、他にはないと思います。しかも上場会社ですから、なおさらすごいこと。実際、一度ジンズを退社した仲間から、「思えばJINSは本当にすごい環境だった」と聞かされることも多いのです。この挑戦できる環境は稀有なのだと気づかされますね。

福原:新しいモノや面白いコトを世の中に発信していこうというのがJINSです。私はずっと店舗周りで、その新しいモノを投入される側を経験してきました。その現場では、本社チームからの「これが世の中をどう面白くするのか」といったメッセージを受け取りながら、お客様にその面白さやメリットをどう伝えるか、また、それにより会社がより良くなるにはどうすればよいかを考えているスタッフがたくさんいると思います。

エリアリーダーとしては、JINSの挑戦や発信力、業界トップの自信といったものを店舗スタッフに伝え、参加させることが重要です。新しいモノは、工程としては手間のかかることもあり、店舗スタッフの業務負荷になることも少なくないのですが、これを世に出すことでどういう未来が待っているか。それは自分の生活も豊かにするのだと、1人1人に接続させるよう心がけています。JINSらしい熱を分断させず店舗に伝える。その先のお客様に届けるために、大事なことです。

 

ありがとうございました。